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会長挨拶・コラム COLUMN

令和4年6月:理教連と私 ―この12年を振り返って―

第14代会長 工藤 滋 先生

会長 工藤 滋

理教連は1952年10月21日に発足し、今年で70周年を迎えます。この長きにわたって組織を継続してこられたのには、2つの理由があると思います。その1つは、組織としての活動の成果であり、もう1つはこの活動を通じて得られる個人としてのメリットです。

私が理教連の役員を務め始めたのは、2011年度に教育研究部長になった時からで、今年で12年目になります。そこでこの間の理教連と私との関わりについて振り返り、組織としてまた個人として得られたことをご紹介してみたいと思います。

教育研究部長を務めている中で印象に残っていることは、2009年度から取り組んでいた『盲学校における理療教育事例集』を発刊できたことです。これは、理療に関する研修の機会が少ないという課題に対して、理療科教員が授業で説明に苦慮している事項の指導事例をまとめた冊子を作成・配布すれば、日々の授業をわかりやすいものにするためのヒントとして活用でき、ひいては理療教育の専門性向上につながると考えて実施したものでした。この業務は校務と並行して行わなければなりませんでしたので、とても忙しい日々でしたが、それに優るやりがいがありました。また、これに関連して開催した全日盲研理療分科会討論会のシンポジストの先生方とお電話や対面で打ち合わせをする中で親睦を深めることができたり、苦楽をともにした教育研究部のメンバーとの絆を深めることができたりして、とてもいい仲間が増えました。

次に理教連の事務局長になりました。この時は組織改革大詰めの時期で、大阪や東京で理教連会員を対象とする説明会を開いたり、規約改正案を作成したりという業務を担いました。また、認定規則改定の時期とも重なりましたので、119名が参加した教育課程編成に関する理教連研修会の座長も務めました。最終的には組織改革は承認され、各校における教育課程変更の手続きも滞りなく進められたと思います。この活動を通して私は、理療教育について多くを学びました。このような機会がなければ、理教連活動を振り返って現在理療教育が直面する課題を分析したり、認定規則や教育課程編成についての知識を深めたりすることはなかったかも知れません。そして研修会の後の懇親会では、東北地方の先生方が集まっているテーブルに招かれて、とても楽しく親睦を深めることができました。

そしてその後は、副会長4年と会長として1年、これと並行してデジタル教科書検討委員会の委員を担いました。この期間の活動で最も大きな成果だと感じているのは、理療科用電子教科書を就学奨励費の対象とすることができたことです。特に弱視生徒用の電子教科書の形式を決める上では、アンケート調査やモニタリングを重ねてUDブラウザ形式とする根拠を明確にしました。また、点字出版社の理解を求めることにも注力しました。その結果、「視覚障害者にこそ電子教科書は必要」という理教連の意見が理解され、今年の1月末に、UDブラウザ版、点字データ版、音声デイジー版の3種類の理療科用電子教科書が、就学奨励費の対象として認められることになりました。この過程では、文部科学省の方々、電子教科書に関係する方々、出版社の方々、点字電子手帳の開発メーカーの方々等、多くの方々と意見交換を行い、思いを伝え合いました。そしてこの活動を通じて、人と人との新たなネットワークが構築できました。

こうしてみると、理教連活動に携わることで、理療教育のために尽力することにやりがいを感じるようになり、またその仕事を担わなければ出会うことのなかったかけがえのない方々と交流し親しくなることができたことが分かります。理教連は、そんな風に、人と人とを結びつけてくれる大切な役割も果たしてきてくれたのです。

今年12月18日には、理教連創立70周年記念事業が予定されています。これを機会に、会員の皆様も理教連との関わりを振り返ってみていただけないでしょうか。そうすることで、きっと理教連の存在価値を改めて認識し直していただけると思います。

教え合い、支え合い、励まし合って進んで行く理教連のために、これからも皆様のご協力を、どうぞよろしくお願い申し上げます。